ソニーのお家芸となったクロスメディアバーにGoogle検索が追加されるとのこと
ソニー、SME製品に適用されているクロスメディアバー(XMB)はテレビ、ゲーム機、HDDビデオなどなど、ジャンルを問わずにソニー製品に適用されているインターフェイス。
XMBの世界観では基本的に横軸にメディアフォーマット、縦軸にコンテンツ(チャンネル)が表示される。
つまり、横軸で、「テレビ」とか「音楽」とか「ゲーム」とかそういったメディア特性を選び、縦軸で映像名や番組名を選択するということになる。
これは、行為としても、
- 見たいコンテンツのメディア特性を意識する(メディアの選択)
- 目的のコンテンツを選ぶ
というステップとなる。
これは、あまりコンテンツがないときには若干面倒だ(PS3などでは通常挿入したソフトがそのまま再生されるので実用上の問題は少ない)。
また、ネットワーク越しにコンテンツを探すとき、あらかじめメディアを「ムービー」「ミュージック」「フォト」等決めてからDLNAサーバ内を探索することになる。このとき、同一フォルダ内に異なるメディアフォーマットのファイルがあっても表示されない。
これは、動画を見たい、と思っているときにはよいフィルタリングになるが、アーティスト切り、つまり「My Bloody Valentineの動画と曲を集めたファイルの中からいろいろ見たい」といった時には面倒になる。
これに対して、すべてのコンテンツをメディア特性を気にしないですべて横並びにしてしまう、という方法も考えられる。
これはWiiの「Wiiチャンネル」の考え方だ。
Wiiチャンネルでは、メディア特性は意識しないで、「天気予報」「バブルボブル(ダウンロードしたファミコンのゲーム)」「Wii Fitチャンネル」・・・といった風に、乱雑に並べられる。
この方法は、「メディアを意識させないで(メディアを横断して)」という意味では、ある意味「クロスメディア」と呼べるであろう。
このチャンネルは平面的だが、数的に一画面には12チャンネルしか入らないので、それ以上になると画面を切り替えることになる。
このとき、デフォルトのページに入りきらないものは、「二軍落ち」扱いになり、ものすごく利便性、アクセス頻度が下がる。
ウェブの世界では、ブラウザに表示される領域のうち、最初に見える領域を「ファーストルック」もしくは「ファーストビュー」と呼び(和製英語ですが)、この領域の価値が最も高いと考える。
逆に、画面下端や、検索結果の2画面目、3画面目というのはほとんど見られない前提で考える。
また、携帯電話などでもこの傾向は顕著であり、紙の時代にはヒットチャートはBest100まで一覧できていたのが、いまではどうがんばっても上位10曲となり、しかもその上位数曲に人気が集中する結果となっている。
オンラインメディアではこの「見える領域」の価値は絶大であるのだ。
この「見える領域」については、また別の機会に論じる。
さて、話をWiiチャンネルに戻す。
こちらの方法は、コンテンツを目的意識で選択することが可能であるが、「12チャンネル」に優先順位の高いものを集める必要がでてくる。
これはWiiをゲーム機として考えれば、普通の家庭で同時に楽しもうとするゲームはせいぜい数個だろうから(Wiiスポーツと、Wiiフィット、マリオカート、あと1,2個とか?)問題ないが、マルチメディアプレイヤー、あるいはWiiのコンセプトの「家庭のテレビにチャンネルを増やす」という点からすると、ちょっと足りないかもしれない。
このときにあるとうれしい機能は、フィルタリングだ。
通常は、優先度の高い全部が見えていても、たとえば「マリオ関係」とか「スポーツ関係」とか「料理」とか、タグ的なものでさくっとフィルとリングして、いるものが見つけられればありがたい(要はファセット分類)。
このとき、タグであるのがポイントで、「ムービー」というタグと「My bloody Valentine」というタグはどちらもありうる。
どういうインターフェイスにするかは要検討だが、すくなくともこのタイプのインターフェイスの場合は、メディアに限らず「特性」を後からフィルターする機能は必要といえるだろう。
と、ここまで二つの「クロスメディア」インターフェイスを見てきたが、ここで悩ましいのがネットブラウザの位置づけだ(ようやく本題)。
ネットのブラウザは、はたして一つのメディアチャンネルなのだろうか?というとそうではないのは明白だろう。
たとえばYouTubeは「インターネット」経由ではあるが、動画メディアであろう。
いまピュアな動画メディアではないように見えても、目指したい方向としてはそうであると思われる。
こういったものは、上記のタグや、あるいはソニーXMBであれば後から「ムービー」メディアにYouTubeを追加する、といった機能で対応するのが現時点では妥当だろう。
では、Googleは?
Googleはメディアか?というと、Googleは上記の文脈で言うところの「クロスメディア」インターフェイスに該当するものである。
通常のいま風のブラウザであれば、みなブラウザのツールバーには「戻るボタン」「ブックマークするボタン」などと並んで「検索窓」が用意されている。
Googleのヘビーユーザーでも、むしろヘビーユーザーほど、Google.comというトップページに行くことは少なくなる(ちなみに筆者はMacのショートカットキーユーティリティのLaunchBarからGoogleやAmazonを呼び出すことが多い、この場合ブラウザすら開いていない)。
Googleもこのことには自覚的で、スマートフォン用には待ち受け画面から検索窓だけ直接開けるアプリケーションを用意している(待ち受け画面に検索窓がある感覚)。
また、Amazon Kindleも物理的にSearchボタンが用意されており、ここにキーワードを入力すると、ネット(A9経由か?)、Wikipedia、ローカル(書籍)内を検索した結果が表示される。
今回のPSPのアップデートは、このダイレクト検索窓がPSPに搭載されるという記事であった。
同様にPS3やWiiといった「デスクトップ」クロスメディアマシンのフロントページインターフェイスにも、今後はこういった検索窓が用意されていくだろうと考えられる。
このとき、検索エンジンだけでなく、diggやdel.icio.usといったソーシャルコンテンツアグリゲーターなどはもっとクロスメディアバーの操作感、Wiiチャンネルの操作感と並列に議論を行う必要がある。
先日のIA SummitでもPeter MorvilleのSearch Patternセッションが人気を博していたが、これもブラウジングと検索の関係性についての関心の高さを表している。
ソニー社内ではクロスメディアバーコミッティーが存在し、事業横断的な仕様検討や新しいメディアへの対応などについて集約して検討がなされているが、こういった方向性への対応も期待したい。
(080618 14:30 昨日を先日に修整)
期待したい。
ぜひ!