ラッキーなことに研究開発用にiPhoneを一台いただいた。
先日の会社一台目のiPhoneよりさらにつっこんで使ってみたいと思う。
IT-PLUSに日本の携帯開発者が見たiPhoneの記事が掲載されていた。
国内6メーカー担当者が実物を見て語った「iPhoneの衝撃と本音」|IT-PLUS
日本のケータイは、テンキーを使い文字を入力する。操作をするにはサブメニューを呼び出して、使いたい機能をリストから選んでいくという流れになる。
(中略)
しかし、iPhoneの場合、タッチパネルによる全く違った操作体系を取り入れた。そのため、多くの人が違和感 を抱くことなく使うことができる。A社プロモーション担当は、iPhoneを操作していくうちに「我々はテンキーという固定概念に縛られているのかも知れ ない」と落胆した。
「例えて言うなら、日本のケータイはリフォームを繰り返した、築何十年の注文住宅なんです。どんなに、内装や外装は変えられても、基本構造の梁や柱は変 えられない。一方のiPhoneはオール電化でバリアフリーが完璧のデザイン住宅。どちらが住み心地がいいのかなんて、一目瞭然です」(B社マーケティン グ担当)
「iPhone担当者は、楽しみながら製品をつくっていたんだな、と思う」(E社製品企画担当)。
「iPhoneには、物作りに対する強い信念を感じる。タッチパッドや機能などを表面的に真似しても、iPhoneを超えるものはできない。開発者の信念がこの製品を作り上げたような気がする」(F社技術担当幹部)。
「チームワークがしっかりしている。一つのものに集中しているから、製品化を実現できたと思う。メーカーとしてのやり方を貫いている点は見習いたい」(C社端末戦略担当)
「我々も対抗できる商品をつくりたい。しかし、やるからには徹底しなくてはいけない」(D社製品企画担当)。
個々の発言にもいろいろとつっこみたいところはあるのだが、これらのメーカー開発者の発言はすべて観点がずれている。
iPhoneにしてもiPodにしても、「どういう利用イメージか」が明確になっている。
この利用イメージを具体的な製品に落としていっているのがiPhoneだ。
この利用イメージ=コンセプトは、いってしまえば思いつきだが、単なる思いつきではなく、背景や、技術的解決策や、矛盾なき操作体系やおもしろさやら、全部を一度に解決できる思いつきでなければならない。
このコンセプトを作るために、僕ら設計者は悩む。
いったん案ができても、それらは多くの問題を解決できてはいるが、細部については、調整が必要になってくる。
この調整を、最初のコンセプト優先で行うか、あるいはさまざまな事情優先で行うか、は政治力だったり、リーダーシップだっり、交渉力だったりする。
ここでどれだけふんばれるかでコンセプトどおりのモノができるかは決まってくるが、コンセプト通りのものができたからといって、それがいいものであるということはまったくない。
むしろ、下手なコンセプトであれば作り手の勝手な世界観を押しつけられているだけであって、諸般の事情を反映させて、機能優先で作ってもらった方がよっぽどまし、ということも少なくない。
どれだけ優れたコンセプトを作れるかと、それを形にまで持って行けるかの両輪が設計者=デザイナの力量となる。
どうも日本ではコンセプトというと漠然となにかあればいい、ということが多いが、本当は、簡潔にして本質をすべて表現した、ソリューションそのものであらねばならないものなのだ。
そんなもの簡単に作れるわけはなく、なのでコンセプト立案のためには、リサーチやブレストなどの十分な思考トレーニングや、背景などの学習、さまざまな習作による試行、議論、対話、休憩、が必要になる。
逆にこのコンセプトが見えてしまうと、あとは自分の判断も基本的にはそのコンセプトに照らし合わせて判断すればいいので、楽ちんとなる。
これはiPodにしても同じ。
もっと話をひろげると科学の分野での理論の発見やアートの分野での創作とも共通している。
余談だが実は日本でも過去に全面液晶の携帯はパイオニアから発売されている。(参考)
スエーデン留学生だった友人のMattが喜んで買っていたが、せっかくの全面液晶だったのに、既存UIが配置されていてがっかりした覚えがある。
大昔に○kiの工業デザイン部門にいたので、移動通信の筐体設計のコンセプトデザイニングや設計に携わったことがあるので、先の国内メーカーの担当者の気持ちも痛いほどわかります。
世の中で言われているほど自由がないんですよ、日本のデバイスメーカーは(w
既存のビジネスの枠(サービス携帯や料金携帯の中)で作ると、iPhone1号機(MotoROKR http://direct.motorola.com/hellomoto/rokr/ )のようなものしか出来ないし、iPhoneをiPhoneたらしめているのは、iPodやMac OS同様、ハードとソフトを一社で企画から設計、製造、デザイン(概観)まですべてを行っているからだと思います。
日本のメーカーでそこまでやろうとしているところはあるのかしら?
日本でやれそうなのはwillcomかemobileあたり?うーん。
いずれにしても正直、UIは楽しいけど、使ってみた感想は「使いにくいなぁ、こいつ」と思う今日(w
さとさん、
メーカーのUI開発の状況はわかるっちゃあわかるんだけど、それはあるいみ織り込み済みな話なわけで、あえてiPhoneを触ってみて、落胆したりびっくりしたりしないで、それはそれとして突き進んでほしいわけです。
iPhoneは実際の使い勝手は確かにつっこみどころがおおいんだけど、意気込みは伝わる。というか意気込みだけで製品化したのでは?と思うほど。
UIとしては、これまたiPodといっしょで、細かい点、大きなコンセプト双方で矛盾やら課題やら、いっぱいあるわけだけど、「何をしたいか」は明確なのでユーザーがサービスを自分ではどう使うか、を個々人でイメージしやすいところがあると思うのです。
が、いかんせん、インターネット端末としての側面もあるので、やれることやUIとしての基本機能の設定とかをほぼ汎用で考えなければならなくなるので、その意味でもiPhoneのUIの難しさはあると思う。
とはいえ、じゃあ日本のメーカーがiPhoneみたいにゼロから作ればiPhoneができるか?というとそれはそれでむつかしいと思います。
生産的に話をするためには、僕らみたいな立場の人間が具体的な開発と、それをとりまくプロセスとの両方からの課題の分析と方向性の提言をしていかねばならないのであろうな、と思ってみたり。