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UX STRAT USA 2018参加

UX STRAT USA 2018 | Day 1

さて、日本は3連休開け、実はコンセントは有給取得推奨日で4連休目の火曜ですが、日曜から北米東海岸のプロヴィデンスにUX STRAT参加のために訪れています。UX STRATは発足当初から参加していましたが、ここ数年会社のメンバーに行ってもらったりしていて僕は久々の参加です。プロジェクトのインサイトを得るために来ていますが、やはりこういったケーススタディが充実しているカンファレンスは、実際のプロジェクトの息遣いや間合いがわかって面白いですね。話してるケースの内容よりも、話し方や重視するポイントのバランスが参考になります。

初日は、MIT Design LabのYihyun Limによるキーノートに始まり、Instagramライブストリーム開発、Targetのユーザー向けアプリの統合など、既存ブランドの価値を残しながら新しい機能をいかに生み出すかという視点でのケーススタディが展開されました。話法的なところでいうと、既存機能の改修の話をするなかで、既存ユーザーを大事にする、言いながらもいわゆる「既存分ランドを大事にして」というような「ブランドを守る」的な話はなく、強いて言えば既存ユーザーの利便を失わないようにする、ということにケアするというスタンスが印象的でした。これは前提として、既存ブランドというものはもともと定義されたバリュープロポジションに基づいているものであって、そこからブレていなければブランド戦略的には問題ない、という価値観が前提としてあることが大きな理由であると思います。このあたり、バリュープロポジションが定義されていないゆえに表面的に前例踏襲を余儀なくされることが多い日本とブランドの考え方が根本的に異なっていることを感じました。そんな話はこちらでは前提すぎて言及はされないわけですが。

また、先々週(!)に参加したIntersectionでは自律的な組織への言及が多かったわけですが、今回のUX STRATでは、ペルソナがわりにJobs to be Done(JTBD)を用いるという話が圧倒的に多かったのが印象的でした。これはメインのトピックによらずに事例のなかでのリサーチメソッドでよくみられていたのでUSでのUXリサーチのなかでの流行なのかもしれません。たしかにビジネス側の人とのコミュニケーションにはこちらのほうが通じやすいかもしれないです。

午後のセッションでは若干ゆるい話が続きましたが、UX STRATの名物スピーカーRonnie Battistaによる、ティモシーリアリーの言葉をもじった「Turn off, Tune out, Dro in」というセッションはなかなか示唆深かったです。今回のセッションでも何人かが言及していたMIT Media LabのCalm Technologyにも通じる話ですが、テクノロジーの呪縛や今生まれているSNSによる精神的ストレスを、自身の経験に注目することで解き放つというストーリーで、大きなUX Strategyを考える上での視座を得ることが出来る象徴的な話でした。

UX STRAT USA 2018 | DAY 2

昨日に引き続きUX戦略の国際会議、UX STRAT2日目の所感です。昨日もInstagramの実プロダクトの開発の話が聞けましたが、本日もGoogleの社内でのUX評価のしくみのプレゼンテーションや、Google、Facebook、AmazonのUXマネージャーによるパネルなど、かなりいまもっともUXに力を入れている企業たちの生の話が聞けるのがこのカンファレンスの特徴です。

さて、今回のUX STRATはテーマが3つにわかれていて、以下のようになっています。

  • Transformation Outward (外への変革)
  • Transformation Inward (中への変革)
  • Transformation Forward (未来への変革)

初日の昨日は、Outward、つまり実際のプロダクトやサービスの変革が扱われ、本日はInward、つまり組織の変革とForward、新しい技術についての話となります。組織の話としては、冒頭にGoogleにおけるUXの企業内部へのインパクトの示し方、というテーマでYouTubeのUXリサーチマネージャーのCatalina Naranjo-Bockによるプレゼンテーションがもたれました。ここでは、社内でUXのインパクトを示すためにどういった活動を可視化すべきか、アピールすべきタイミングはどういったものかといったものを次々と紹介していきました。かなーり地道な活動ではありますが、それを構造化したシートを作り部内で徹底することできちんと評価が得られるようになるという意味で多くの組織で取り入れるべき活動であるといえます。そして、保険大手のNationawide社の全社を顧客志向にするリブランディング活動の事例紹介に続いて、Amazon、Facebook、GoogleのそれぞれUXマネージャーによるパネルディスカッションが行われました。ここでは各社のアプローチのトレンドやコミュニケーション上の課題などが紹介されました。話は逐次的にどんどん進んでいったのでいろいろなトピックが入り乱れましたが、面白かったトピックとしては各社ともリサーチ素材としてのビデオ利用が一般的であること、先日参加した別のカンファレンスであるIntersection18でも話題によく出ていた分散型の組織形態を目指していること、そして調査結果が広く社内で活用されるようになってきている現状を踏まえ、調査および結果の透明性の担保に努めているというあたりは参考になりました。

午後のセッションではIBMから連続して2セッション、AIとデザインの話がなされましたが、IBMということでWatson利用が前提になることもあり、具体的にUXをどのようにAIで変えていくかというものより、AIテクノロジーをとりいれるための組織のありかた、デザインにAIを取り込む際の倫理(Ethics)の視点が提示されました。特にAIを取り入れた際の倫理の課題は自動化によってこれまでよりさまざまな最適化やカスタマいぜーションが_効きすぎてしまう_ことが起こりうる状況であり、日本でも独自にも視点を持つ必要があります。

そして最期のセッションではインテルのDr. Faith McCrearyによるFraming the Future (未来をかたち作る)と題されたセッションが行われました。そこでは、未来の構築のために必要な論点として、Holistic Framing、Collaborative + Participartly、 North Stars、Accesible、Digital Intensityという視点が提示されました。このなかで、技術の発達進化によって、Human + Interfaceの時代にはUIが重要となり、プロダクトとサービスが統合された時代にはEnd to Endの体験が重視され、そしてこれからSystems of Systemsの時代ではExperience Transformationが求められるというビジョンが提示されました。これは僕の量子力学的デザイン観とも通じる視点であり、個人的にも深めていきたい論点です。

ということで、2日にわたってUX STRATに参加してきましたが、発足当初に比べてプログラムコミッティーも設立され、なによりプログラムもかなり練られたものになっている印象を受けました。特にGAFA(Appleはいないけど)の中のUX戦略の話を直接聞けるのはいいですね。大規模な商業的カンファレンスとは異なったコンパクトなものではありますが、UX戦略の今をキャッチアップするためには日本から参加する意義はあると感じます。

UXの本質について

ユーザー体験(ユーザーエクスペリエンス/User Experience: UX)という言葉が広く聞かれるようになってきた。半ばバズワードのように、特にウェブデザインやマーケティングの記事などの中では、この言葉を見ない日はない。しかしながら、多くの場合、UXという言葉の真意や可能性を取り違えてしまっている。本稿では、いくつかの観点からUXの本質を考えてみる。

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UX STRAT 2013

去る9月10日、11日の2日間、米ジョージア州アトランタにおいて、はじめてのUX戦略(ユーザーエクスペリエンス戦略)についてのカンファレンス、UX STRAT 2013が開催された。

このカンファレンスは、LinkedInのUX Strategy & Planingディスカッショングループでの議論が発端となり開催されたもので、同グループの発起人でもある米Retail UXのUXディレクターであるPaul Bryanが主催を務めている。

UX Strategy and Planning | LinkedIn
http://www.linkedin.com/groups/UX-Strategy-Planning-3735935

上記グループにて議論が盛り上がり、これをテーマに企画されたカンファレンがUX STRATとなる。

初回となる今回は、約200人の参加者が集まり、2日間に渡るシングルトラックのセッションと、その前日に午前と午後に分けられたいくつかのワークショップとで会は構成された。

以下、会のトピック的なセッションを紹介しながら、問題意識と今後の展望を述べる。

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4 Topics on HCD

昨日はHCD-Netの賛助会員向けイベント「サービスとHCD」。たいへん充実した、示唆深い内容であったので内容を記しておきます。
どうでもいいが、賛助会員向けイベントってタイトルはださいですね。再考します。

このイベントは、毎年HCD-Netが開催している、賛助会員を優先的にご招待するイベントでHCD-Net会員社もしくは、理事等からの推薦により、実際の企業の現場のお話しをうかがう、というある意味HCD-Netのイベントのなかで最も実際的に意義深いイベント。
通常、いろいろな方とお話しをしていても、みなさん事例を知りたいとか、他社の動向を知りたいというお話しが多く、そこに応える会なのですが、なにぶんきちんと広報できていないため、実はちゃんとそのメッセージが届いていないと思っています(イベント名もそうです)。

さて、今回は、これまでご要望も多かった、Webサービス系の企業にお集まりいただきました。
mixi、楽天証券、Naver(LINE)、クウジットと、それぞれ知名度も高い、これからのサービス企業。
実際にお話を伺うと、それぞれのお話しごとに学ぶべきことが多くありました。

まずは、mixiの馬場さんによる、mixi内でのHCD活動の推進について。
お話自体は、mixi内でのHCDプロセスの実施例、およびその反響の声。馬場さんを始めとする社内のスタッフがHCDプロセスをどのように普及させていったかというストーリーとして大変参考になりました。
特に、

・理論(社内研修)+実践(実務の実施)の両輪で理解が深まる、体系的な理解を助ける施策と実務と結びつけるための施策と、両方が必要

という点が今後の企業内でのHCD活動の普及のポイントとなるという指摘が響きました。

次は楽天証券の水田さんによる、これまた奥深い事例のお話し。
単なる(と言っては失礼ですが)楽天証券サイトのUI改善のお話しと思わせて、実はご本人の前職などの経験をふまえて、「一般投資家にとって投資とはなんなのか、証券会社の提供すべき価値はなんなのか」を考察する、というサービスデザインの文脈のお話しでした。

・これまでの投資=エージェントが運用を面倒見てくれるので自分は判断のみが必要
・オンライン投資=自分で探索、理解からしなければならない

と箇条書きにしてしまうと単純化されてしまいますが、この裏側に潜む期待価値はオンライン証券のみならず、今後のWebサービス全体に適用できる枠組みと感じました。

もちろん、UI改善のお話しも、

・大きな改修はユーザーの負担となり、クレームも増える
・ユーザーが新しいUIに習熟するまで半年はかかる
・移行措置として短期的なユーザビリティを下げたとしても、UIの共存を実施

という、現在のWebサービス事業者が抱える共通の課題に対してのひとつの示唆を示していただきました。

僕自身も、IA Summit等でAmazonのUI移行のステップのケーススタディなどを聞いていて、うちのコンセントでも企業サイトリニューアルの際に、基本的にはフルリニューアルせずにマイナー改修を繰り返す、というプロジェクト方針をとっていますが、「共存」というのはサービス事業としてのひとつのリアリティと感じました。

3人目はいまをときめくLINEについて、Naverの本田さん。
Naver(NHN)は以前からUTルームの充実など、UX改善には力を入れられていますが、今回のお話しでは、まず、オンラインサービス開発の考え方とHCDプロセスとの齟齬のお話しから始まりました。
具体的には以下の2点が既存のHCDプロセスが合わないところ:

・Deploy(リリース)前後の区別が曖昧
LINEはマイナー改修(平均4週に一度のリリース)とリニューアルもわかれている
・日常的な利用状況把握と深い利用状況把握を区別したい
リニューアルのためには深い調査が別途走る

このため、Naverでは、HCDプロセスを独自にカスタマイズした、開発ライフサイクルプロセスを定義しています。

コンセントは基本的にはエージェンシーなので、プロジェクトにかかわる際には上記で言うところのリニューアルの大型案件に関わることが多いのですが、HCDの本質は実はマイナー改修の室にあるということもあり、自分達のプロジェクトプランをちょっと考え直してみようかと思っています。

最後はクウジットの末吉さん。
前の三方がサービス事業者なのに対して、技術ソリューション提供の会社ですが、QRや位置情報など、これからのUXを支える技術を提供している会社ですので、特にそのユーザーへの提供のさせかたに興味を持ちました。
クウジットでは、いつも「技術をそのまま提供したのではユーザーに理解されない/利用のインセンティブを感じてもらえない」という課題を持っていらっしゃるとのことで、そのためユーザーの目線に合わせたメタファーやベネフィット提示をどうするか、に尽力されているとのこと。
まさに、この「技術のユーザー目線への変換」がHCDアプローチの中でのビジョニングやデザインのフェーズで求められることであり、ここを越えていない解決案しか出せないと単なるユーザビリティエンジニアリングの域にとどまってしまいます。

その意味でこれも新しいHCD/UXDのフレームワークを意識させるようなセッションでした。

幸い明日は奥沢UXクリスマス会というものがあるので、その場でUXプリンスにも意見を聞いてみようと思います。

ユーザーエクスペリエンスデザイン

ユーザーエクスペリエンスデザインという言葉も多く聞かれるようになってきた。ユーザーインターフェイスやらユーザビリティと「ユーザー」が似ているので、議論になったりもしているが、根本的にユーザーエクスペリエンスはブランドといっしょで、結果的に得られるものであり、個別の施策ひとつひとつは構成要素ではあるけれどだからといってそれがユーザーエクスペリエンスかというと、あるケースではそうかもしれないが、普遍的観点で言えばちがうことになる。それは、ブランドが品質によって支えられていることもあれば、接客によって支えられていることもあれば、テレビCMに出てくるタレントによって支えられていることもあれば、あるいはそれらすべての組み合わせであることもあるようなもので、仕掛け側が意図しているものと、実際に顧客が感じている部分とがずれていることも含めてブランドとユーザーエクスペリエンスデザインは近いものだ。

ユーザーエクスペリエンスデザインの難しいところは、それが横断的なものであることに起因している。決して製品自体だけで実現できるものではなく、プロモーションやアフターサービス、説明書など、なにと相関しているかは結果論でしかわからない。Webデザインの界隈から流行りだしたのは、それがWebチャネルで完結するサービスデザインの分野において実現が容易だったからであって、決して次世代Webデザインがユーザーエクスペリエンスデザイナなわけではない。なので、ユーザーエクスペリエンスを考える際には、少なくとも企業内ではすべての部署を横断した、タブーなき議論が必要となる。

知られているようで知られていないユーザーエクスペリエンスデザインの起源、ドン・ノーマンの設立したAppleのユーザーエクスペリエンスラボはまさにこの横断的組織の走りであった。企業がある程度の規模になると、どうしても縦割りになることは規模の経済を実現するためには当然の帰結であるが、その横断的な問題解決のベクトルが「顧客の利用体験」に向いていたというのがユーザーエクスペリエンスデザインの本質である。この意味でも、ブランディングと近いことがわかると思う。

なので、ユーザーインターフェイスで解決しようが、プロモーションで解決しようが、その手段自体は結果でしかない。ポイントは問題を解決しようと考えている人が、その問題解決のフレームをできる限り大きくとることができるかどうかであって、その観点が持てるかどうかがデザイナーとしての閾値となる。

ユーザーエクスペリエンスデザインにおいて、問題・解決策の発見と、その実現とは、まったく別の問題といっていいほど異なっている。問題の発見は、どちらかというと観点の問題であり、センスの問題ではないが、その体験にどれだけ興味があるかどうかに依存しているという意味で、身を置いてみないとまず発見はできない。そして、問題を認識できた時点で、その解決はわりと自明であり、あとはどうやってやるか、他の解決策との共存をどうするか、というテクニカルな問題に焦点は移る。

僕は車がわりと好きな方で、もちろん運転も好きだが、車内の情報システムも興味範囲であるので、昔から自分への投資と言い訳をしてさまざまなナビを試したり、実験を繰り返してきた。しかしながら、こういった仕事をしていることもあり、ある程度テクノロジーリテラシーもあるので、実はどういったインターフェイスでもそこそこ使いこなして、問題がない状態にしてしまう。一般に多少使いにくいカーナビであっても、極論を言えばGPSで現在地がわかる機能に問題がなければあとはこちらの工夫次第でなんとかなってしまう。その際には、そのシステムが持っている処理体系の構造をはやいところ把握してしまい、機器の持っているクセをこちらが吸収する、というテクニックが必要となるが、まあこれはいわゆるITリテラシーがそこそこある、と言われている人が持っている技術といえる。

このように、そこそこ使いこなせてしまうと、逆に言えば問題がそこにはないので、問題の発見ができないことになる。禅問答のような話であるが、そういう理由で世の多くの「使いにくい」やら「ひどい体験」は放置され、そもそも問題と認識されていないため、企業側からクレームと認識されてしまっている。

これは相対的な問題であり、まあそもそもデザインというのは問題解決なので相対的でしかあり得ないのだが、世の期待値に対して、2歩先ではなく、0.5歩先を行った解決策が一番効くゆえんでもある。

僕は昔から自分エスノグラフィーと称してやったことのない体験の感想や、新しい観点を持てた瞬間を記録するようにしている。これは「初めて知る」という貴重な瞬間は二度とやってこないので、Evernoteだろうとメモ帳だろうとなんでもよいので残しておくとかなり役に立つ。余談になるが、6年くらいつけていた自動車内のメモはカーナビのアーキテクチャデザインを行う際にものすごく役に立った。

最近やり始めたことに、「ユーザーエクスペリエンスプロトタイピング」がある。これは、自分に新しいユーザーエクスペリエンスを体験させてみて、どう思うかを自分で理解するもので、IDEOメソッドカードでも確か似たようなものがあった。最も直近で効果を実感したプロトタイピングはカーナビの目的地設定。僕の車のナビは、まあ最近の機種ではあるのだが、基本的にはスタンドアローンで、クラウド上にアカウントがあったり、PCから目的設定できたりということはできない。そういったあたりは、単に企業側がその部分にコストをかけた場合の回収が見込めていないからやっていないだけの話なので、そのうち実現されるだろうと思っているので危惧していないのだが、問題は「実現されたそれらの技術をどうやって使うか」については、実現されていない技術故に試してみたり、評価したり、ましてや改善したりができないところにある。なので、自分で「あったらいい機能」を勝手に実現して、改善を図り、来るべき時代(でそういった設計を依頼される事態)に備えておく必要がある。

一般的には、カーナビの目的地設定は、車に乗車して、かちかちと設定を行う。僕は仕事でもわりと車を使うので、平日の日中に名称、住所、電話番号、地図などから目的地設定をして、高速を使うべきかどうか、どっちのルートが渋滞しているか、などを確認し、移動を行う事態が週に数回はある。車に乗り込む際に目的地は正確にわかっている必要があるので、スケジューラに住所まで入れておいたり、携帯に住所や電話番号を転送したり、ということをよくやっていた。

これを、車を降りる際に次に乗ったときに行く目的地を設定する、というやりかたに変えてみた。これは、「車に乗った瞬間にナビは目的地を目指している」という状況をシミュレーションするためにやっていることで、自分で降りる際にちまちまと入力している行為は裏方作業なので忘れておくかなかったことにしておく。車に乗り込んで、エンジンをかけて、目的地へ向かうときはたいてい急いでいて、かつプロジェクトのメンバーといっしょだったりすると、プロジェクトの話をしたり、ぎりぎりまで議論をしたりと忙しい。そして、僕の会社は恵比寿にあるが、目的地までのルートによって恵比寿駅側に向かおうか、ガーデンプレイス側に向かおうかと、向きがまったく逆になるので、ナビが設定されていないと、最初の角を曲がれなくなってしまう(そこまでの状況はまれだけど)。この状況の中で目的地が設定されていて、さすがにVICSの渋滞情報はエンジンをかけてから取得するからすぐには反映されないのだが(これもわりと致命的な仕様だとは思うが)、到着時間やルートが即座に出てくると大変快適であり、そして数回その状況になれてしまうと、もうそうでないときにはいらっとしてしまうまでになってしまった。

これ自体は他愛ないことであり、もう実現できていることなのかもしれないが、ポイントは「その状況になれてしまった自分」がどう変わっているかを観察できるところになる。こればかりは実現されていることを知っただけではなかなか想像することが難しい。難しい故にプロトタイピングが必要なのだが、しかしながらプロトタイピングを発動しようと考えるためには、問題の存在を想像しなければならない。これはiPodが音質ではなく、CDからのリッピングという「連携」を問題の本質ととらえたこととにも言える。

結局のところ、優れたユーザーエクスペリエンスは創造力の問題なのだ。問題のフレームを自分で設定し、その問題が解決できることを有意義と見なす感覚を持てること、このことがデザイナの本質であり、その観点を持ちたいが故に個別の技術の習熟をめざす必要がある。と、僕は考えている。

UX+Pattern Weekends

忘れないうちに骨格だけでも:

6/8 講演準備の議論としてtaiga氏とパターンについて話す。「新しい物語」という言葉遣いについてtaiga氏が敏感に指摘。

6/11 東工大 Creative Flowにて「IA、未来のパターンランゲージ」を講演、中埜さんにゲストに来ていただく。パターンとはなにか、について初めて人前で話し、自分の理解具合を把握。問題意識は、「【物語】をいかにIAに盛り込むか」

6/12 HCD-Netフォーラムにて産総研北島氏の実時間制約下のMHP、認知的クロノエスノグラフィの技法から調査→モデル化→設計→評価における既存アプローチの限界と、UXにおけるシミュレーション技法の着想(フェーズ2)。

6/12 同じくHCD-Netフォーラムにて石黒さん、takram畑中さんの公開ブレストから、ブレストと情報の体系化とのせめぎ合いについて一つのモデルをみる。これは後日パターンランゲージにおける「パターン生成」と「ランゲージ化」の問題と同質であることがわかる。

6/18 AsianPLoP パターン祭りにて、ようやくパターンランゲージがなにかつかめてきた。中埜さん、伊庭くんの話も面白かったが、先週自分で話すためにまとめていたのが大きかった。ようやくちゃんとしたパターン生成のワークショップも体験したので、今度試してみます。eto氏になんかいろいろと思っていることをまくしたててしまった。すんません。あと、伊庭くんとすげーひさしぶりに(たぶんD論前にNYに行った以来だから、10年ぶりくらい?)に会った。中埜さんからは次回にHCD-Netサロンに来ていただく了解をゲット。

IA Summit 2010

さて、毎年恒例のIA Summitに今年も参加してきました。

11回目を数える今回は、アリゾナ州フェニックスにて、4/7〜8でチュートリアル、4/9〜11でメインセッションという日程で開催されました。

昨年に引き続き、#ias09のハッシュタグが用いられましたが、今回は実験的に#ias10jの日本語コメント用のタグを使ってみました。そのせいで、日本語での議論も結構活発に行われたように思います。

IA Summit 2010 Tweet Wall (Japanese)
http://ias10j.tweetwally.com/

今年のサミットは昨年に引き続き、若干人数は減ったように思いますが、全体的にはこれまでのサミットで一番面白かったです。

面白かったポイントは、僕自身発表をしたり、セッションにコメントをしたりと、より関与するようになっていることもあるのかもしれませんが、昨年が自己言及的な年だったので、みんなその反動でより内容に力を入れたのかもしれません(まあ、IAコミュニティはだいたい5年に一度くらいIAのあり方についての議論のループに陥りがちなんですが)。

さて、今年のセッションの報告は、またIA Summit Reduxを追って開催したいと思っておりますが、参加したセッションで記憶に残ったトピックをまとめておきます。

  1. 「Design Thinking」の流行?

    日本でも流行の兆しがある(かもしれない/といいなあ)、IDEOに代表されるDesign Thinkingですが、今年はそういったVisualizationや体験型のプロセスのセッションが目立ちました。IxDAのほうでもそういうセッションがあったかと思いますが、IA Summitではあまり覚えがなかったです。
    今回はダン・ロームの基調講演に始まり、Dennis SchleicherのBodystorming(これはブレストとアクティング・アウトが組み合わされたかなりおもろい手法です)、Adaptive PathのKateによる、インタビューのメモの視覚化、といったワークショップと組み合わせたようなセッションがありました。
    こういったセッション自体は大変面白かったのですが、IAとUXD(UXデザイン)との融合がより顕著になってきたことの表れとも言えると思います。
    この傾向はRosenfeld Mediaの品揃えにも表れています。

  2. 前提知識の高度化により話が具体的に

    直球のIAの話は、より具体化した話が増えてきました。
    インストラクションデザインとしてのIA、カードソーティングの応用手法、SNSと現実のソーシャルネットワークとの齟齬とその解決方法、机の上に積み重ねられた書類のIA、RITEと呼ばれる短期間でまわすユーザビリティテスト、コンテンツ評価手法、EIAの実践、ライブペルソナの構築、と実践的にも、あるいはプロジェクト設計や戦略構築に有用な視点、事例報告を得ることができました(上記は僕が参加したセッションです)。
    ただ、こうなってくると、やはりプロシーディングス(予稿集)を見ただけではどういったセッションなのかが予測できないのです。やはり、以前のように、プログラムを「基礎」「実践・事例・理論」「R&D・未来」といったように分けてセッションが走っているとわかりやすいのですが(たぶんプログラム構築の人も大変なんだと思いますが)。
    まあ、正直UPAやCHIなんかとかぶってきつつあるのも事実です。

  3. 「我々への言及」は減った

    先にも書きましたが、去年多かったコミュニティ自体についての(どちらかと言えば悲観的な)議論はなかったと思います。
    臨時のセッションでIAサミットの未来、というのはあったようですが、そちらはもっとコンサルタントがクライアントを連れてこられるようにするとか、社内のスタッフをまとめて連れてくるにはどうしたらよいか、といったような、かなり具体的な検討だったようです(参加した@ericthebellから聞いた話ですが)。
    まあ、やはり去年のJJGの話が効いたのだと思います。

  4. そしてRSW

    まあ、ともあれ、リチャード・ソウル・ワーマンでしょう。
    基調講演の最中のtweetはけっこうさんざんな感じですが、いや、べつに彼の基調講演にプラクティカルなものなんてもとめていませんて。
    生のRSWの話を聞けるだけでこの会に来た会があるってものです。実際、泣いている人までいました。
    ちなみに、僕は無謀にも彼に自分のポスターセッションの内容を説明しようと押しかけてみましたが、あまりの興奮ですげー早口になってしまい、RSWから直々に「Calm down(落ち着きなさい)」とお説教(?)をうけることができました。怒られてなんですが、大変光栄です。あと、話についても「そこは全体像から話して」というように直々に指南を受けることができました。いやいや。
    そういえば、数年前のPeter Melholzのクロージングプレナリーでも、彼はRSWの話からはじめてましたっけ。Peterにも感想を聞いてみたいと思います。

ちなみに、僕の発表は「IAフレームワーク」。
拙著「IA100」で用いた、情報アーキテクチャデザインのための枠組みの紹介です。

うれしいことに好評で、本も日本語なのに、多くの人がページをめくって細かいところまで見てくれていました。
いくつか有益なコメントももらえたので、今後に反映させようと思います。

と、このエントリはUAのフェニックス→LA便が遅延し、一泊滞在を余儀なくされたLAのホテルにて書いております。

帰国したら、写真類は追ってアップします。

HCD-Net meets Google guys

HCD-Net理事でもあるDESIGN IT!/ソシオメディアの篠原さんの計らいで、DESIGN IT! Conference 2009のゲストとして来日されているBraden Kowitz氏(米Google社シニアUXデザイナ)、Donal Mountain氏(米Google社UXリサーチャ)らとHCD-Net理事メンバーとの意見交換会が開催された。

今回、Google代表としてではなく、各分野のスペシャリストとして講演されるとのことだったが、GoogleでのUXアクティビティなどを聞くことができた。

おふたりとももともとそれぞれ肩書きがユーザーインターフェイスデザイナ、ユーザビリティアナリストだったのが数年前にGoogleでは、UXの概念の普及と共にユーザーエクスペリエンスデザイナ、ユーザーエクスペリエンスリサーチャと変わったとのこと。

他にも、Google内及び日本国内でのUXリテラシの普及度、分野ごとの具体的なユーザビリティエンジニアリングの手法など、実践における方法などで意見交換を行うことができた。

例によってSuica等のプリペイドカードの日本での普及と携帯との融合は彼らには目新しかったようで、早速Suicaを購入していた模様。