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昨日はHCD-Netの賛助会員向けイベント「サービスとHCD」。たいへん充実した、示唆深い内容であったので内容を記しておきます。
どうでもいいが、賛助会員向けイベントってタイトルはださいですね。再考します。

このイベントは、毎年HCD-Netが開催している、賛助会員を優先的にご招待するイベントでHCD-Net会員社もしくは、理事等からの推薦により、実際の企業の現場のお話しをうかがう、というある意味HCD-Netのイベントのなかで最も実際的に意義深いイベント。
通常、いろいろな方とお話しをしていても、みなさん事例を知りたいとか、他社の動向を知りたいというお話しが多く、そこに応える会なのですが、なにぶんきちんと広報できていないため、実はちゃんとそのメッセージが届いていないと思っています(イベント名もそうです)。

さて、今回は、これまでご要望も多かった、Webサービス系の企業にお集まりいただきました。
mixi、楽天証券、Naver(LINE)、クウジットと、それぞれ知名度も高い、これからのサービス企業。
実際にお話を伺うと、それぞれのお話しごとに学ぶべきことが多くありました。

まずは、mixiの馬場さんによる、mixi内でのHCD活動の推進について。
お話自体は、mixi内でのHCDプロセスの実施例、およびその反響の声。馬場さんを始めとする社内のスタッフがHCDプロセスをどのように普及させていったかというストーリーとして大変参考になりました。
特に、

・理論(社内研修)+実践(実務の実施)の両輪で理解が深まる、体系的な理解を助ける施策と実務と結びつけるための施策と、両方が必要

という点が今後の企業内でのHCD活動の普及のポイントとなるという指摘が響きました。

次は楽天証券の水田さんによる、これまた奥深い事例のお話し。
単なる(と言っては失礼ですが)楽天証券サイトのUI改善のお話しと思わせて、実はご本人の前職などの経験をふまえて、「一般投資家にとって投資とはなんなのか、証券会社の提供すべき価値はなんなのか」を考察する、というサービスデザインの文脈のお話しでした。

・これまでの投資=エージェントが運用を面倒見てくれるので自分は判断のみが必要
・オンライン投資=自分で探索、理解からしなければならない

と箇条書きにしてしまうと単純化されてしまいますが、この裏側に潜む期待価値はオンライン証券のみならず、今後のWebサービス全体に適用できる枠組みと感じました。

もちろん、UI改善のお話しも、

・大きな改修はユーザーの負担となり、クレームも増える
・ユーザーが新しいUIに習熟するまで半年はかかる
・移行措置として短期的なユーザビリティを下げたとしても、UIの共存を実施

という、現在のWebサービス事業者が抱える共通の課題に対してのひとつの示唆を示していただきました。

僕自身も、IA Summit等でAmazonのUI移行のステップのケーススタディなどを聞いていて、うちのコンセントでも企業サイトリニューアルの際に、基本的にはフルリニューアルせずにマイナー改修を繰り返す、というプロジェクト方針をとっていますが、「共存」というのはサービス事業としてのひとつのリアリティと感じました。

3人目はいまをときめくLINEについて、Naverの本田さん。
Naver(NHN)は以前からUTルームの充実など、UX改善には力を入れられていますが、今回のお話しでは、まず、オンラインサービス開発の考え方とHCDプロセスとの齟齬のお話しから始まりました。
具体的には以下の2点が既存のHCDプロセスが合わないところ:

・Deploy(リリース)前後の区別が曖昧
LINEはマイナー改修(平均4週に一度のリリース)とリニューアルもわかれている
・日常的な利用状況把握と深い利用状況把握を区別したい
リニューアルのためには深い調査が別途走る

このため、Naverでは、HCDプロセスを独自にカスタマイズした、開発ライフサイクルプロセスを定義しています。

コンセントは基本的にはエージェンシーなので、プロジェクトにかかわる際には上記で言うところのリニューアルの大型案件に関わることが多いのですが、HCDの本質は実はマイナー改修の室にあるということもあり、自分達のプロジェクトプランをちょっと考え直してみようかと思っています。

最後はクウジットの末吉さん。
前の三方がサービス事業者なのに対して、技術ソリューション提供の会社ですが、QRや位置情報など、これからのUXを支える技術を提供している会社ですので、特にそのユーザーへの提供のさせかたに興味を持ちました。
クウジットでは、いつも「技術をそのまま提供したのではユーザーに理解されない/利用のインセンティブを感じてもらえない」という課題を持っていらっしゃるとのことで、そのためユーザーの目線に合わせたメタファーやベネフィット提示をどうするか、に尽力されているとのこと。
まさに、この「技術のユーザー目線への変換」がHCDアプローチの中でのビジョニングやデザインのフェーズで求められることであり、ここを越えていない解決案しか出せないと単なるユーザビリティエンジニアリングの域にとどまってしまいます。

その意味でこれも新しいHCD/UXDのフレームワークを意識させるようなセッションでした。

幸い明日は奥沢UXクリスマス会というものがあるので、その場でUXプリンスにも意見を聞いてみようと思います。