シルクドソレイユのLOVEを見た。ラスベガスにきてどうもカジノの雰囲気が耐えられなくかなり弱っていたのだがこれを見て復帰した感じ。
公演は、このためにビートルズのプロデューサーであったジョージ・マーティンとその息子によって編集されたLOVEにあわせて演じられる。というより、LOVEがこの公演のために作られている。CDのほうを先に買っていてけっこう聞いていたのでどんなものか興味津々だったが、想像以上に音楽とマッチした内容だった(あたりまえか)。
アルバムLOVEのほうは、5.1ch版とステレオ版とが用意されていたが、この会場ではなんと全席の頭部にステレオスピーカーがついていて、サラウンド音はここから鳴る仕掛け。メインのPA(これも会場が広いのにディレイを感じさせない優れた作りであった)で低音を含めた音楽部分、サラウンドスピーカーで効果音とがならされ、おかげで円形かつ上下にすり鉢状になっている空間でもきちんとした音楽がなっていた。これを聞くために公演を見に行ってもいいくらい。できれば滞在中にもう一回行きたい。
中学生時代に学校にウォークマンを持って行き、無駄に授業中に学生服の袖からイヤフォンを引き出して聴いたりしていたとき、ビートルズは左右にパートがわかれていて(右に伴奏、左に歌、とか)、音楽にならなくて驚いたことがあった。あれは要は2チャンネルミックスということだと思うんだが、そういう聴き方を前提にするというのはどういうことだったんだろうか?このLOVEでようやくビートルズを2チャンネルミックス以外できちんと聴く、ということになる(たぶん)。
公演はシルクドソレイユらしいサーカスを単なる見せ物ではなく、ストーリーがあるパフォーマンスに昇華させたものだったが、約2時間ずっと飽きずにぐぐっとひきこまれながら楽しめた。シルクドソレイユの公演というと、サーカスを超えたサーカスという印象はあったものの、どうしても最後は中国雑伎団的な「技」を強調する印象があって、東洋人としては(?)どうもそこがしっくりきていなかった。が、このLOVEは、音楽をテーマにしているだけあって、全編そういった技を踊りに落として表現している。なので、踊りじゃない技だけの表現はナシ。これがつぼにはまった。
舞台上は、おもちゃ箱をひっくり返したようにずっと落ち着くことなく、人が飛び交い、誰かが走っている。これだけ同時に動いていてもなにもぶつかったり絡まったりしない舞台機械はすごい。そこだけで一つの芸術と呼べる(天井を見上げると考えられないくらい複雑に動いている)。前述のように、みんななにかしら踊りを踊っているので、一種のミュージカルとも呼べなくもない。バレエや新体操の技もこういう総合的な踊りの中に昇華されると、単なる競技とは違う、別なモチベーションがわくと思う。
それにしてもこの運動能力はただものじゃない。これだけの能力を維持して、しかも毎日の公演をこなすのはただごとではないが、この公演を作り出す達成感はそれに代え難いものであろう。